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【気象と古典】「五月雨」と「梅雨入り」

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2021年5月16日、観測史上最も早い近畿地方での「梅雨入り」が発表されました。
梅雨(つゆ)」とは何か、「五月雨(さみだれ)」「五月晴れ(さつきばれ)」との関係とは何か、についてお話します。


【観測史上最も早い「梅雨入り」】


2021年5月16日、気象庁より「近畿地方は梅雨入りしたと見られます」との発表がありました。

さて、気象庁のサイトでは、過去の梅雨入り-梅雨明けの記録を見ることが出来ます。



正確には、梅雨が過ぎてから日程が確定するのですが、この表を見ると、ここに記録されている中では、最も早い「梅雨入り」だ、ということが分かりますね。

これまで「梅雨入り」が最も早かったのが、1956年/2011年の「5/22 頃」ですから、1週間近くの更新です。

なお、九州南部は基本的に近畿より「梅雨入り」が早いこともあり、1956年に「5/1 頃」の「梅雨入り」という記録があります。
(ちなみに九州南部の2011年の「梅雨入り」は「5/23 頃」で、近畿より遅くなっています)



(神戸の気温と湿度をもとにグラフ作成)

気温のグラフを見ても、段々と暑くなってきているのが分かりますね。
さらに湿度も上がり、蒸し暑さも増してきています。


【梅雨前線】


では、「梅雨(つゆ)」とは、どういう気候現象でしょうか。
梅雨(つゆ)」は「梅雨前線(ばいうぜんせん)」という「前線」が、日本の上空で停滞することで起こります。

気象庁の用語解説には「梅雨前線」について、
春から盛夏への季節の移行期に、日本から中国大陸付近に出現する停滞前線で、一般的には、南北振動を繰り返しながら沖縄地方から東北地方へゆっくり北上する。
とあります。

続けて調べてみましょう。
停滞前線」とは「ほぼ同じ位置にとどまっている前線。」
前線」とは「寒気団暖気団との境界線で、風向、風速の変化や降水を伴っていることが多い。
となっています。

つまり、「梅雨」は、日本の上空で、「寒気団」と「暖気団」が均衡を保っている状態。
梅雨」をもたらす「寒気団」は「オホーツク海気団」、「暖気団」は「小笠原気団」です。

気象庁さんのページから、5/18の天気図を見てみましょう。
左は日本中心、右は東アジア全体です。



3か月前以前の分については、気象庁さんが詳細な解説入りで1月ごとの天気図を提供してくださっています。
その中から、昨年の7/9の天気図を見てみましょう。


今の天気図と非常に似ているのが分かりますね。
毎年、このような「梅雨前線」が現れることで、日本には「梅雨」が訪れ、恵みの雨をもたらしてくれるのです。

そして、「太平洋高気圧(小笠原気団)」の勢力が増すことで、「梅雨前線」は段々と北へと押し上げられ、
日本全体が「太平洋高気圧」に覆われて、日本は「夏」を迎えるのです。


【「五月雨(さみだれ)」と「五月晴れ(さつきばれ)」】


さて、「梅雨」と聞くとをイメージしますか?と聞かれると、「6月」と答える方が多いのではないでしょうか。
しかし、旧暦を使っていた時代は、この「」が少しずれていました。

例えば今年の場合、近畿地方が梅雨入りした「5/16」は、旧暦の「4月5日」。

6/10」が旧暦の「5月1日」で、「7/9」が旧暦の「5月30日」になります。
だいたい、旧暦の「5月」が丸ごと「梅雨」の時期だということが分かると思います。

さすがに今年は梅雨入りが早いので戸惑ってしまいますが(笑)

閑話休題(それはさておき)

旧暦で描かれる古典の世界においては、「五月雨(さみだれ)」こそが、今の「梅雨」にあたり、
五月晴れ(さつきばれ)」は、梅雨の合間の晴れ空を指す言葉なのです。

五月雨の 降り残してや 光堂
五月雨を 集めて早し 最上川

という松尾芭蕉の有名な句がありますが、このことを踏まえて情景をイメージすると、

 梅雨の中でも美しく佇む光堂(中尊寺金色堂)
 梅雨の雨で増水した最上川

を描いた俳句であることが分かると思います。
どうですか? 正しくイメージできていましたか?

ただし、「五月晴れ」については、現在は「5月のさわやかな晴れ」として使っても問題はない、となっています。
(なので、古典を勉強する時には一層注意が必要です。)

さて、旧暦の6月のことを「水無月(みなづき)」と言いますね。
6月梅雨で雨が続くことが多いのに、何故「」が「」い「」なんだろうと思ったことはありませんか?
そう、梅雨が明けて、暑い晴れの天気が続く今の7月こそが、旧暦6月水無月」なのです。

言葉が指すものが変わると、意味も変わってしまいます。
この「五月雨」や「五月晴れ」という言葉は、その典型なのだなと思います。


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