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【2023年振り返り】おすすめの本
- お知らせ
SDGsアドバイザーが講師をつとめる、兵庫県の理科実験教室、キッズアース播磨町校です。
明石市立天文科学館 館長の井上先生が書かれた、プラネタリウム100年史。
さて、2023年も面白い本との出会いがたくさんありました。
人類の歴史と進化を追った | 『禁断の進化史』 | 更科 功 |
『人類の起源』 | 篠田 謙一 | |
言語の獲得について描かれた | 『言語の本質』 | 今井 むつみ/秋田 喜美 |
土偶についてスポットを当てた | 『「土偶を読む」を読む』 | 望月 昭秀/小久保拓也他 |
プラネタリウム100年の歴史を紐解く | 『星空をつくる機械 プラネタリウム100年史』 | 井上毅(明石天文科学館館長) |
について紹介していきましょう。
【『禁断の進化史』『人類の起源』】
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『禁断の進化史』で描かれるのは、「人間」がいかにして「人間」に進化していったか、という大きな問題。 二足歩行が「人間」と他の動物との違いである、とは良く言われますが、 二足歩行になったことで、何が出来るようになり、その結果、脳がどのように進化したのか、 環境の変化、食料の変化、様々な変化がどう脳を進化させ、その進化が何をもたらしたのか、 パズルが解かれるように、人類の進化が描かれていきます。 第2部は「意識」をキーワードに進化について考えるパートになっています。 『人類の起源』は、2022年のノーベル生理学・医学賞でも話題となった「人類の進化」についての本。 「古代DNA研究」という最先端の手法で、「我々」がどこから来たのか、 どの「民族」がどのように作られていったのかについて書かれているのですが、 読めば読むほど、興味深い。 最後に作者が書いている 「世界中に展開したホモ・サピエンスは、遺伝的にはほとんど同一といってもいいほど均一な集団である」 |
「すべての文化は同じ起源から生まれたのであり、文明の姿の違いは、環境の違いや歴史的な経緯、そして人びとの選択の結果である」
という視座は、今後の研究によってさらに深められていくことでしょう。
この2冊を読んで思うのは、我々人類が、いかに同じルートの上に立っているか、ということ。
言語の壁があれど、文化の違いはあれど、我々は同じルーツを共有するホモ・サピエンスなのです。
大きな戦争が、「人類」の命を蝕むこの時代だからこそ、このことを強く意識したいと思うのです。
【『言語の本質』】
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この本も、言わば「人」と他の動物の違いを描いています。
キーワードは帯にもある通り、「オノマトペ」と「アブダクション(仮説形成)推論」。
「オノマトペ」は、「ドキドキ」「ワクワク」「ハラハラ」などの「感覚を写し取った」音声言語のこと。
「感覚を写し取った」ものならば、他言語の「オノマトペ」も理解できるのか?という問いかけから始まり、100年前に行われた有名な実験(「maruma」と「takete」を聞いた時、〇△どちらを選ぶか)、「オノマトペ」は言語なのかという言語学上の問題まで切り込みます。
そして、人間が言語を習得するに際し、この「オノマトペ」がどのように役に立っているか、という話から、「アブダクション(仮説形成)推論」についての話に移ります。
京大の松沢教授とチンパンジー「アイ」による実験の紹介から話は始まります。
「黄色の積木なら△」「赤の積木なら◇」「黒の積木なら〇」という選択が出来る「アイ」に、逆のこと、すなわち「△」「◇」「〇」を見せて積木を選ばせようとすると出来ない、というのです。
さらに、別のサルの実験では、蛇の這った跡から蛇の存在を予測できない、ということが分かっているそうです。
逆に言えば、この推測(知識の過剰な一般化)が出来ることが、居住地の拡大に寄与し、言語の習得、科学の発展へとつながったのではないか、という話につながっていきます。
挙げられている、子供たちの可愛らしい言い間違いの多くの例も楽しく、また、先が気になる構成も、ページを薦めさせます。
ベストセラーが納得の面白い本でした。
【土偶を読むを読む】
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昨年気になっていた『土偶を読む』ですが、立ち読みした時に少し違和感を覚え、買いませんでした。
この本で、その違和感は快刀乱麻に断たれました。
土偶についてイメージで語るだけでは、それまでに積み重ねられてきた研究実績を無視してしまうことになります。
もちろん、研究において、イメージによる飛躍は大切なのですが、積み重ねなき飛躍はイカロスのように墜落してしまいかねません。
こちらの本では、『土偶を読む』を土台に、今までなされてきた先行研究が紹介されており、たくさんの先生方からの寄稿、対談企画など含め、非常に読みやすく面白く仕上がっています。
土偶について、知らなかったことを学ぶことのできる、まさに入門書と言えると思います。
【星空をつくる機械 プラネタリウム100年史】
2023年は、プラネタリウムが「発明」されて100年の記念すべき年でした。 |
ただのプラネタリウム史ではなく、天文の歴史、星について知りたいと思った人類の歴史。
そして、宇宙の動きを、その秘密を再現しようとした人々の歴史なのです。
涙が出そうなくらい、熱くて、面白くて、頭の良い人々が紡ぐこの物語を、是非読んでください。
きっと、明日にもプラネタリウムに行きたくなること請け合いです。
そして、明石市立天文科学館は、元旦から営業しています!
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さて、明石市立天文科学館に設置されているプラネタリウムは、東ドイツのカールツァイス社製。
そう、東ドイツの、なのです。
東西ドイツに分割された歴史、第二次世界大戦の重い影が、このプラネタリウムには落とされているのです。
1990年代、東西の冷戦は終わりを告げ、イスラエルとパレスチナの歩み寄りもあり、世界は平和になると、平和に向かっているのだと、信じられるそんな時代がありました。
ロシアのウクライナ侵攻に端を発する世界の不穏な動き、その前から兆候はありました。
星を読むように、未来を見ることは出来ないかもしれません。
しかし、ルーツをたどれば我々はみな同じ道を歩んできた、同じホモ・サピエンスなのです。
神はバベルの塔を壊し、世界をバラバラにしてしまいました。
今、世界をバラバラにしようとする神は誰なのか。
その神をこそ、乗り越えて、平和な世の中を願いたいと思うのです。
そのためには、我々が正しい知識を得、自分の頭で考えること。
この読書案内がその一助になれば幸いです。
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