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【映画鑑賞】窓際のトットちゃん

    07_おすすめ本・映画
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さて、映画『窓際のトットちゃん』を観てきました。


原作はもちろん、黒柳徹子さんが書かれたベストセラー『窓際のトットちゃん』
監督のお話にもありましたが、いわさきちひろさんの描かれた絵のイメージを崩すことなく、アニメとして見られるように、丁寧なキャラクター造形で、くるくる動くトットちゃんがとても愛らしくて楽しい、一方で哀しくて切ない、感情を揺さぶられる映画でした。


【原作小説『窓際のトットちゃん』】


本の冒頭、「これは、第二次世界大戦が終わる、ちょっと前まで、実際に東京にあった小学校と、そこに、ほんとうに通っていた女の子のことを書いたお話です」と書かれている通り、原作は黒柳徹子さんの自伝的エッセイです。

飾らないトットちゃんの、元気いっぱいで、とても楽しい、そして刺激的な毎日のお話。

一方で、これは「トモエ学園」の小林宗作先生のお話でもあります。
生徒たちを温かく見守り続け、困った時に寄り添い、過保護になることもなく、みんながありのままでいられる学校を創られた小林先生。

黒柳さんによる先生の行動の読み解きも素晴らしい。
その時は気づけなかったけど、なぜか心に残った先生の行動を描写するとともに、その根底に生徒への愛があることを私たちに教えてくれます。

また、これは「戦争」というものの物語でもあります。

これだけ自由で、楽しかった学校生活が、次第に窮屈になって行く様が、「お見舞い」「ヴァイオリン」などの話に見て取れます。

そして最後の「さよなら、さよなら」。
小林先生の「今度は、どんな学校、作ろうか?」が心に染み入るラストです。

それにしても、一つ一つ印象深いエピソードではありますが、短編エッセイを束ねたような原作を、どうアニメにするのでしょう?


【映画 窓ぎわのトットちゃん】


原作の本には、表紙をはじめ、いわさきちひろさんの絵が印象的に、たくさん使われていますが、このエッセイが書かれた頃には、ちひろさんは亡くなられていて、原画から雰囲気に合った絵を選んで使った、というお話があとがきにあります。

とはいえ、「トットちゃん」と言われて、イメージが浮かぶのはいわさきちひろさんのタッチでしょうし、何より、黒柳徹子さんご本人がご健在です。
キャラクター原画を作るのも難しかったと思います。

また、様々なエピソードをどう選ぶのか、どうつなげるのか、脚本も難しかったことでしょう。

それでも、確かに「窓ぎわのトットちゃん」だ、と言える、不思議で楽しくて、明るくて哀しい、そんな作品に仕上がっていました。

原作の中でも印象的なエピソードを、基本的に忠実になぞりながら、時に少し付け加えることで掘り下げ、また、大人の世界の変化を見せることで、原作には(きっと敢えて)描かれなかった、戦時下で増していく窮屈さ、不自由さがズシリと伝わってくる作りで、原作以上に原作の世界を知ることが出来るのではとも思います。

私自身は、映画の最初から、ずっとトットちゃんと仲良くしてくれていた「駅のおじさん」が、いつの間にかいなくなって、トットちゃんの知らない女の人になっている、というシーンがショックでした。

また、トットちゃんのイメージがあふれ出して、商店街を彩ったり、魚になったり、そういったシーンが、生き生きと描かれているのも、子供の目から見た世界らしく、違和感なく世界に入っていくことが出来ました。

黒柳徹子さんご自身のナレーションがありましたが、さすがの聞きやすさと声の温かさで、映画そのものを彩っていらっしゃいました。

主題歌はあいみょんさん。これも映画の雰囲気を盛り上げてくれていました。


そして、電車に乗って去っていくラスト。
原作にもあるのですが、その前の、家が倒されるシーンなども含め、原作以上に印象深いエンディングになっていました。


【新しい戦前】


今、世界の様々なところで、軍事力を伴った紛争が起きています。
もしかすると、日本も巻き込まれるかもしれない、そんな不安もあおられます。

しかし、実際の戦争や紛争で犠牲になるのは、いつも社会的弱者です。
現実のウクライナやパレスチナでも、命を落とすだけでなく理不尽に不自由な生活を強いられているのは、まさにそういった方々です。
一方で、戦争を命じた、戦争に導いたものたちは、自らの命を危険に晒すことなく、他人の命を簡単に犠牲にしていきます。
そのことを念頭に置いて、戦争について語らなければなりません。

武力を持つことを否定するのではありませんが、武道の極意は「鞘の内」です。

刀を抜く、抜かないの前に、勝負をつける、そのための歴然とした武力であり、それを背景にした胆力であり、それ以上に必要とされるのが、智力であり、コミュニケーション能力、すなわち国で言えば外交力なのです。

戦争は外交の失敗であり、外交の敗北です。

ウクライナに対するロシアのように(ロシア国内での論が立っていたとしても)難癖をつけて国を襲うのは論外ですが、
パレスチナの問題は、おそらく「焚きつけた勢力」があり、ハマスがそれに乗ってテロを行ってしまったのが失敗だったと解釈しています。
ネタニヤフ首相相手に、あの行動は、つけ入る隙を与える結果になるのは明白で、「焚きつけた勢力」はそこまで分かってテロを煽ったのでしょう。

結果、多くの民間人の犠牲、社会的弱者へのしわ寄せが起こってしまうわけです。

映画の中で、小林先生が、講堂に貼ってある「亜米利加と大日本帝国の艦船一覧」(失われた戦艦には×が書かれています)を破り捨てるシーンがあります。
一連の報道がプロパガンダであったことを、後世の我々は知っているわけですが、「敵の艦船」の破壊に一喜一憂していた空気が、自由を愛していたはずの子供たちが嬉々として兵隊ごっこをする空気が、お腹をすかした子供たちに兵隊さんの苦しさを持ち出して我慢させる空気が、戦時中には確かにあったのです。

国を愛す、国を守る、その覚悟が本当にあるならば、そうならないための政治、外交を行っていかなければなりません。

あるいは、本当に戦争の可能性があると考えているのであれば、「敵を知り己を知る」ことを十全にしなければなりませんし、「後方攪乱」も十分に仕込んでおく必要があります。

正直、軍事力増強だけ言うのも、平和主義のお題目を唱えるのも、どちらも「お花畑」なお話なのです。
軍事力増強、プロパガンダの徹底が、いかにお花畑な論か、というのは、太平洋戦争の敗北から明らかなのですから。

さて、2023年から2024年にかけて、政治資金裏金問題が発生しました。
これに対し「派閥のせい」「会長のせい」「秘書のせい」にして、自己責任を取る気などさらさらない、醜い日本の政治家に「鞘の内」で外交を行う胆力は有りや否や。

黒柳徹子さんは、ずっとユニセフの親善大使として、世界中の子供たちの支援に取り組んでこられました。
その種は、この戦中の経験、小林先生との思い出の中にあるのだと思います。

SDGsには17の目標がありますが、その根底にある理念は、「地球上の誰一人として取り残さない」ということです。
これはまさに、黒柳徹子さんが、そして小林先生が、活動されてきた考え方そのものと言えるのではないでしょうか。

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また、続編も出ています。

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平和への祈りが、世界中に届きますように。
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