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【ラッコ】国内からラッコが消える日
- 03_自由研究,05_見学・おでかけ,理科
SDGsアドバイザーが講師をつとめる、兵庫県の理科実験教室、キッズアース播磨町校です。
1月に入って「ラッコ」についての悲しいニュースが入ってきました。
【国内園最後のラッコたち】
このニュースの中で、国内飼育のラッコが、鳥羽水族館 にいる2頭だけになった、ということを知った人も多いでしょう。
数年前、ラッコについてblogを書いたのも、「関東最後のラッコ」についてのニュースがあった時でした(2019/01/13)。
2019年のこの記事の中で「日本国内で100頭以上飼育されていたラッコも、6園館で8頭(オス3頭、メス5頭)」と書いています。
この時に紹介していた6園館のラッコはそれぞれ
三重:鳥羽水族館 (当時はメイのみ)
福岡:マリンワールド海の中道(2021年2月マナ(メス)死亡/2025年1月リロ(オス)死亡)
/2021年ラッキー(オス)・2022年明日花(メス)死亡)
和歌山:南紀白浜アドベンチャーワールド(2021年鳥羽水族館へ、キラが移動)
石川:のとじま水族館 (2020年9月ラスカ(メス)死亡)
新潟:マリンピア日本海(2020年3月クータン(オス)死亡)
という運命をたどりました。
スマスイでも鳥羽水族館でもラッコの写真は撮っていたのですが、動きが早すぎて、きれいな写真はありませんでした…。
【ラッコの涙】
ラッコは国内でも度々カップリングがなされていて、何頭かは国内生まれです。
(ラスカとクータンは親子だったりしますし、明日花もスマスイ生まれでした。)
カップリングのために、ラッコが移動することもしばしばありました。
しかし、鳥羽水族館の二匹は、共にメスなので、国内で飼育されているラッコに会えるのは、この二匹が最後、ということになります。
1982年に日本に輸入されて以来、ラッコ人気は上昇し、1994年には国内28施設で122頭が飼育されていたそうです。
しかし、ラッコは、ワシントン条約の対象となり、国際的な取引が規制され、
主な生息地であるアメリカが、ラッコ保護のために輸出を禁止し、1998年には日本への輸入は途絶えました。
そのため、残された国内のラッコ同士でカップリングをし、各園で工夫しながら飼育環境が整えられてきました。
しかし、自然状態とは全く違う生育環境、個体数の減少による近親交配への危惧、ラッコ自身の繊細な性格から、個体数は減少していきました。
※スマスイの展示施設での展示
そもそも、ラッコの個体数が減少し、絶滅危惧種に指定されるに至ったのは、人間による乱獲が原因でした。
ラッコは、身体の構造上、密度の高い毛で防水と保温を行っています。
しかし、この毛が、上質の毛皮として目を付けられ、乱獲されるに至ったのです。
また、ラッコは、極寒の海で体温を保つため、かなりの量を食べる必要があります。
人間との水産資源の奪い合い、地球環境の変化に伴うエサの減少、ちょっとしたきっかけが、減少圧力を高めた部分もあるかもしれません。
ラッコについて調べると、1989年に起こったアラスカでのタンカー座礁の事故による重油流出という事件が出てきます。
この影響で、個体数が大幅に減った、というのもあるようです。
エクソンバルディーズ号原油流出事故 - Wikipedia
人間の様々な経済活動が、生物の生息域を減少させ、絶滅へと追いやっていく…
ラッコの生息域の減少は、他の動物でも見られる、環境負荷の縮図を見ているようです。
【明るい兆し】
一方で、ラッコに関する明るいニュースもあります。
北海道にいたラッコは20世紀初頭に乱獲のため姿を消してしまっていました。
しかし、2014年頃から野生のラッコが見られるようになってきたそうです。
野生のラッコが個体数を増やす傾向は世界的にあり、まだまだ難しい問題はあるものの、各地で少しずつ個体数も回復しているようです。
とは言え、今後の気候変動による環境の変化などを考えると、まだまだ予断は許さない、というところでしょうか。
気候変動と人間活動により、クジラの個体数が減り、回遊ルートも変わっていった結果、それまで大きな獲物を狙っていたシャチが、ラッコを含めた小動物まで襲うようになったのではないか、という説もあるそうで、まだまだラッコが安心して暮らす時代というのは難しそうです。
ラッコは可愛らしいため、人間による保護もある程度の成功を見ましたが、世界を見渡せば、たくさんの絶滅した動物がいます。
これを機に「生物多様性」について考えてみるのも良いかと思います。
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- ラッコ,須磨水族園,水族館,鳥羽水族館,生物多様性
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